モノクロのチカラ
上野の西洋美術館から、恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館の「ブラッサイ展」へ。
ブラッサイという名前も知らなかったが、新聞の記事を読み、掲載されていた一枚の女性の写真に強く惹きつけられて足を運んだ。
これが、とても素晴らしかった!こういうときはホント嬉しいな。
1930年代のパリを写したモノクロ写真は、ごくありふれた日常を写したものだったが、ありふれた日常が、なぜか普遍的な風景のようにも見えてくる。
リアルなものを写して、リアルを超えて幻想的な世界が見えてくる。
ブラッサイは絵も学んでいたそうで、素描や彫刻もよかった。
裸婦のデッサンは力強く、女性的な面がデフォルメされていて、彫刻も同様にどこか原始的な母性を感じさせる女性像だった。
像といっても皆小さなものなので、手の中ですべすべとした感触を楽しみたくなるほどだった。
親交が深かったピカソの顔を彫った石は、温かみのある感じがした。
私が惹かれた写真の女性は当時有名だっだという。
いつも同じバーで、脂肪のついた両手にこれ以上できないほど指輪をはめ、首にはイミテーションの真珠を連ね、座っている。 写真はその姿を撮ったものだ。
鋭くこちらを睨み付けている顔と一緒に、現実が抜け落ちている心も見えるようだった。
ヘンリー・ミラーは、ブラッサイについての『パリの眼』と題した本を上梓したそうだ。
読んでみたいと思った。
「ブラッサイ展」