たまには揺れてみたい?

溺レる (文春文庫)

『溺レる』 川上弘美 (文春文庫)

表題作の他7篇による短編集。

共通しているのは「ユレ感」かな。

どの作品の、どの登場人物も皆、心も身体も頼りなく、拠り所なくユラユラと揺れている。

闇夜に手に手を取って、おぼつかない「道行き」正にこれ、といった感じなのが、

『溺レる』のモウリさんとコマキさん。

しかし、「アイヨクにオボレ」ているはずの彼らだが、悲壮感はない。

何かからの逃避といったような起点も、ましてや終着点も見えない。

登場人物の名前のカタカナ書きも効果的だ。(収録作品全て)

無意味性と没個性。軽さ。あいまいさ。

『亀が鳴く』のユキヲは、何事に対しても全うできない「私」から逃れようとする。

人は強い者に引き込まれるのだろうか。

もしかしたら、弱い者に引き込まれるのではないだろうか。

弱い者ほど、ズブズブと泥沼に誰かを引き込むのではないだろうか。

結局強い者は、逃れ出られるかもしれないが。

何故か私は、一見弱そうに見えるものほど、恐いような気がする。

どの登場人物も漂いながら、食欲と性欲はある。

まぁこれさえ定かではなく、逆に必死にしがみついているというか、貪るというか

・・滑稽で悲しい。人間だモンね。当たり前か。

『百年』40代でサカキさんと情死した私が、無限の空間をたゆたう。

サカキさんは皮肉にも87歳まで俗世を生きてたらしいが。

文中、漱石の『坊ちゃん』が出てくるが、この作品自体が『夢十夜』のようだ。

川上弘美の『蛇を踏む』を以前読んだが、これなら乱歩の方が面白いかなと思ったくらいで、それからは全く読まなかった。

フッと手に取ったこの『溺レる』の方がいいなぁ。

『センセイの鞄』も読んでみようかな。

私の感想も、ユラユラ取り留めがなく・・

たまには揺れてみたい?” に対して2件のコメントがあります。

  1. りゅう より:

    そうでしたか。
    澁澤は、好きですが、どちらかというと彼の著作より彼自身が好きなようです。龍彦は、澁澤から頂いてます。

  2. りゅう より:

    >何故か私は、一見弱そうに見えるものほど、恐いような気がする。

    全く、同感です。「センセイの鞄」は、映画まで観ましたw
    やはり、ユラユラと、とりとめもない感じでした。

コメントは受け付けていません。

前の記事

それでも見る楽しみ

次の記事

小説は世に連れ・・