化学変化だったのか。

フレスコ画のルネサンス―壁画に読むフィレンツェの美

『フレスコ画のルネサンス 壁画に読むフィレンツェの美』 宮下孝晴 NHK出版

フレスコ画の基本的な用語、技法から、ジョット、マゾリーノ、マザッチオ、ウッチェッロ、フラ・アンジェリコ、ピエロ、ボッティチェリ、ギルランダイオ、レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ等の作品解説。

さらに、壁画修復の技術と倫理、現代のフレスコ画についても言及している。

本書はNKK人間講座のテキストに加筆修正したものとのあり、大変分かりやすく、作家のエピソードなどもまじえて、大いに興味のある内容だった。

基本的なことながら、フレスコがどうして堅牢なのかも初めて理解できた。

完璧なフレスコ画(ブオン・フレスコ)は、接着剤を全く使わず水で溶いた顔料で生乾きの漆喰に描いていく。

そして、漆喰の水分が蒸発して硬化する時に、その結晶の中に顔料が閉じこめられる。・・こうだと思っていた。

でも、全然違っていた。それは単なる水分の蒸発によって色素が定着するわけではなかった。

炭酸カルシウム(石灰岩/大理石)を焼いて→ 生石灰 + 二酸化炭素

生石灰に水を加えて→ 消石灰(漆喰モルタル)

漆喰が乾く過程で

消石灰が二酸化炭素と化合して→ 炭酸カルシウム(石灰岩/大理石) + 水

この手のことに疎い私でも、なるほど~大理石に戻るのか、それは強いわけだ!と納得。

だから、乾いた漆喰に描くセッコ法は、テンペラと同様にメディウムによる定着だから全く性質が異なる。そのためブオン・フレスコの一部にセッコ法が用いられた作品は、その部分の剥落が激しいということになる。

ブオン・フレスコは、漆喰が生乾きのごく限られた時間にしか描くことが出来ない。だから大作を描くときは一日分(ジョルナータ)の漆喰を塗り、それを継いでいって仕上げる。

素早く正確なデッサン力と計算された色遣いが不可欠となる。油彩よりはるかに難しい技術が必要だ。(これが油彩が普及することになる一要因)

ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井壁画と「最後の審判」はブオン・フレスコで制作されている。

法王庁にいた画家セバスティアーノ・デル・ピオンボは、ミケランジェロが油彩で描くと思い、準備万端整えてあったそうだ。しかし彼は時流に立ち向かってブオン・フレスコで描いた。

ミケランジェロは、

「油彩で壁画を制作するなど、女どもか、はたまたセバスティアーノ・デル・ピオンボのようなのろまで怠け者の画家がやることだ」と言い放ったそうだ。

彼がこの絵を描き始めたのは、60歳を越えている。正に神業としか思えない。

化学変化だったのか。” に対して1件のコメントがあります。

  1. ワインちゃん より:

    そうですね、パワフルでマッチョ。(笑)キリストというより、ギリシャ神話のゼウスみたいですね。

  2. ワインちゃん より:

    『最後の審判』の中に描かれている、骨と皮ばかりになってげっそりやつれた人間は、ミケランジェロ自身ではないか,といわれているという話をテレビでみたことがあります。そのくらいこの絵を仕上げることが大変な作業だったと。
    そうでしょうね、想像を絶する体力ですよね。60歳すぎてもそれだけの体力・気力があるなんてミケランジェロは何を食べていたんだろう?

この投稿はコメントできません。