根底から覆す!

キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』 (講談社+α新書)

『キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』』 F・W・ニーチェ著/適菜収訳 (講談社+α新書)

本書『アンチクリスト-キリスト教批判の試み』は1888年に執筆、1895年に出版されている。

解説によると、1888年というのは、ニーチェが執筆可能な最後の年にあたるとのこと。彼は、翌年から精神錯乱が始まり11年生き延びて、1900年に没したそうだ。

現代語訳(超訳というそうだ)で、兎に角読みやすく、哲学書という堅苦しい感じは全くない。

しかし、『アンチクリスト』は大変ショッキングな内容であり、2000年来の西洋の人々の心の基盤となっているキリスト教に真っ向から、「否」と宣言したものだ。

先ず、キリスト教を「恨み」「復讐」「同情」からなる不健康な宗教であり、周囲のあらゆるものを腐らせる。としている。

例えば、問題点として

第一に、「神」「霊魂」「自我」「精神」「自由意志」などといった、ありもしないものに対して、本当に存在するかのような言葉をあたえたこと。

第二に、「罪」「救い」「神の恵み」「罰」「罪の許し」などといった空想的な物語をつくったこと。

第三に、「神」「精霊」「霊魂」など、ありもないものをでっちあげたこと。

第四に、自然科学を歪めたこと(彼らの世界観はいつでも人間が中心で、自然というものを少しも理解していなかった。)

第五に、「悔い改め」「良心の呵責」「悪魔の誘惑」「最後の審判」といったお芝居の世界の話を、現実の世界に持ち込んで、心理学を歪めたこと。 (P36~37)

また、ニーチェはこれらのことを「真理」として受け入れることを強いる姿勢を批判し、また「信仰」とは何が「真理」であるか知ろうとしない態度である。とも述べている。

さらに、イエスの教えはキリスト教ではないとし、弟子達とりわけパウロは、象徴としてイエスの死を利用したにすぎないと手厳しい。

訳者の適菜氏は、イラク戦争における米ブッシュ大統領を、独善的なキリスト教の顕著な例としてあげている。

キリスト教に基づく「正義」「善悪」の色分け、善が悪を滅ぼす道理の空虚。

ニーチェは100年以上も前にその「愚」を指摘していたのだ。

まったく、勇気と信念と英知の凄い書物もあったものだ。