批評について
『甘美な人生』 福田和也 (新潮社)
村上春樹、芥川龍之介、谷崎潤一郎、和泉式部、折口信夫、等々を対象とした文芸評論集。
『批評私観』は、批評の本質に斬り込む強い意志を感じた。文中、自らの批評の核となるある禅寺のエピソードがあり、読み応えのあるものだった。
批評は、一個の、独立した作品である。(中略)
文芸なり、音楽なり、美術なりの鑑賞を出発としながら、感想が批評となる時、批評は媒体から完全に独立した、文芸、音楽、美術其の物になる。 (P14)
そして、批評は「作品」から最終的に一個の認識であるとし、またその認識の意志を貫くことが出来るかどうか、であると述べている。
禅寺に無造作におかれた石の下には無数の屍があり、西芳寺の枯山水も屍の山を抱えているという。
自分もそこに葬られることを想い、土の冷たさを、湿気を感じ、面々とした恨みと憤怒で息苦しくなりながら、哄笑でで石組みを震わせる力を乞い、願う。 (P16)
宣言のようにも感じ、凛然とした決意が立ち上るように思えた。