森の力、人の温もり

森のなかの海(上) (光文社文庫)

『森のなかの海 上下』宮本輝(光文社文庫)

主人公の希美子は、阪神淡路大震災に遭い奇跡的に一命を取り留める。しかし直後、夫が義母と共に自分を裏切り、愛人との結婚をすすめていたのを知る。

そんな折り、学生時代から知り合いだった老婦人が、広大な奥飛騨の山荘を希美子に譲ると言い残し亡くなる。

希美子は二人の子供と、同じく被災し両親を亡くした隣家の三人姉妹を伴って、奥飛騨の山荘で生活をはじめ、人生の再生をはかってゆく・・。

人が人とのふれあいと通して、心の傷を癒し、立ち直っていく。それを包む豊かな自然。

物語の核となっている数種類の木や蔓が絡み合い渾然一体となった巨木、その存在感は印象的だ。

全体的に、ユートピア的な感も否めないが、若い姉妹やその友達が成長していく過程は、教育というものが生活の中にこそある、ということを示してくれた。

この本は友人が貸してくれたものだ。

彼女は実際にこの震災にあって、とても苦労した経験がある。

きっと、私より色々と思うところがあったのだろうな。

最後に印象に残った言葉を・・

「虚空に道あり、ですね」

  (中略)

「風を見ていると、その言葉の意味を考えてしまいます。風はそのときそのとき勝手に無秩序に吹き渡っているようだけど、じつはそうではなくて、風には風の通る道がちゃんと決められているんじゃないかって・・・」 (下巻 P300より)