根南志具佐(ねなしぐさ)ハビコる
イメージで紹介してあるのは、新編の方です。
『黒に染める』 高山宏 (ありな書房)
先に読んだ『高山宏 表象の芸術光学』でも同様のことが書いてあったが、一見無関係なものとのコネクション、関係付けの発見に学知の醍醐味、楽しみがある。と感じさせてくれる。
先ず、18世紀以降における江戸とヨーロッパの驚くべきパラレリズムを説く。
ヨーロッパでの視覚文化の発展。世界を絵として眺める「ピクチュアレスク」は演劇、各種光学機を使った興業、風景画、庭園などに顕在する。江戸においても、歌舞伎、相撲、浮世絵などの隆盛は、正に目の快楽といえる。
同じく分類学の流行は、江戸では歌舞伎・相撲の番付、それに「見立」てのあらゆるランク付け。さらにランクの付かないものは「尽」にして見せる。また植物栽培の細分化、流行など。
同時代の知的遊民平賀源内の『根南志具佐』の、根を欠いた言の葉の錯綜。「憂き」と「浮き」のナンセンス文学と氏は言う。言葉の凄まじい羅列、引用、そして中空。引き合いに澁澤龍彦を出してきて、両者の博物学的網羅的思考を並列させているのが面白い。
もっとも、澁澤への献辞、「ドラコニアン・エピターフ」として一章もうけてあるが・・。
「ドラコニアン・エピターフ」は高山氏の澁澤龍彦への交々の思いが伝わってきた。
他にも、小栗虫太郎、江戸川乱歩、泉鏡花などへの考察もあり、このあたりが好きな向きにはタマラナく面白いのでは、と思われる。