ダイナミックな関係に酔う
『高山宏 表象の芸術工学』鈴木成文 監修(工作舎)
大学での高山宏氏の講義をまとめたもの。読んでいるだけで教室に圧縮された「知」の熱気が伝わってるようだ。一冊の本の中にこれほどの驚きと発見があるとは!
高山氏は、目で見ることの出来るものすべてを対象にする視覚文化を考えてみようと説く。
ミケランジェロもミッキーマウスも、怪しげな見せ物も、目で見ることの出来る表象について、根本的な議論をなすべきではないかという。
それには、文学、建築学、天文学、あらゆる垣根を超えたダイナミックな関係の発見こそが、従来の閉鎖的な美術史から脱却するものとしている。
洋の東西で不思議なパラレルがみれれる18世紀、ピクチュアレスクなイギリス庭園と、北斎の風景の関係。マニエリスムの驚異、蒐集から、分類、啓蒙、美術館への発展なども興味深い。
また、インテリア(室内装飾)とインテリオリティ(精神的内面)の鏡映も面白い。
シャーロック・ホームズが、「ワトソン君、君って頭悪いね、頭の中の部屋の整理が出来てない」と言う言葉を引いており、言い得て妙という感じ。
ページのあちらこちらに「吹きだし」よろしく、散らしてある警句、提言、名言を読むだけでもワクワクする。
曰く「メディアとは、もともと人と神とをつなぐ巫女のこと。」
「詩もデザインの問題としてある。建築そっくりです。」
「光の啓蒙時代が、影狂いのロマン派を生む。」
「植物を通して占有する帝国主義って知ってる?」
などなど、興味津々といったところ。
巻末にある「受講者と読者のためのリーディング・ガイド」は有り難い。
縦横無尽でエキサイティングな高山氏の言説を、少しでも理解、消化するために、格好の書物たちが勢揃いしている。