徒 然 日 記

04/5/31(月)

小学生の娘に薦められて、マガジンノベルズ『金田一少年の事件簿 殺戮のディープブルー』天樹征丸(講談社)読了。
南海の孤島にねむる古代遺跡と、それを当て込んだリゾート開発に纏わる連続殺人事件。
言わずと知れた「ジッチャンの名にかけて!」の決めゼリフ、アクションあり、トリックありで賑やかでした。何となく金田一君役の剛クンや、テレビ版で見た松ジュンの顔が浮かんでくるナァ。
読んで初めて知ったけど、美雪ってホントはグラマータイプなんだ。な〜んだ、ともさかりえ、全然違うじゃん!
  −−読み終わっての会話−−
私 「犯人があの場面で、あの行動ありか〜?納得できないよぉ。」
娘 「えっ〜、全然おかしくないじゃん。それ程彼女を愛してるってことでしょ!」
私 「はぁ、そう言われりゃ、それまでだけど。(只今、恋愛至上主義なお年頃・・か)」


04/5/30(日)

二作とも、江戸川乱歩賞全集14に収録された作品。
『黄金流砂』中津文彦(講談社文庫)読了。
盛岡のホテルで日本古代史の大御所が殺される。主人公の新米記者は義経北行説に纏わる古文書が事件の鍵を握ると確信する。
古文書解読のために古代文字を探っていく過程は興味深く、暗号の解読の面白さも十分に楽しめた。
東北に燦然と輝く平泉の黄金文化を背景に、ロマン溢れる歴史ミステリーだった。

『焦茶色のパステル』岡嶋二人(講談社文庫)読了。
東北の牧場で、牧場長と競馬評論家、二頭のサラブレッドの親子が射殺される。犯人の狙いは、馬か人か? 殺された競馬評論家の妻 香苗と友人の芙美子が、犯人探しの役回りで展開していくので、あまりぎすぎすした感じがなかった。
競馬について全く無知で、興味のない私でも違和感なく読めた。あっけらかんとした友人の芙美子や、人の良い喫茶店のマスターのキャラのせいもあって、重くならない軽妙な仕上がりという感じがした。


04/5/26(水)

ずっと気になっていた東京都美術館の「栄光のオランダ・フランドル絵画展」を見てきた。
目玉はフェルメールの「画家のアトリエ(絵画芸術)」であるけれど、16世紀のマニエリスム、17世紀フランドルのバロック、オランダ共和国独立後の歴史画、風景画、風俗画などバラエティに富んでいて見応えがあった。

「画家のアトリエ(絵画芸術)」は、初めて見て頭の中のイメージとは異なり、思っていた以上に明るい画面だと思った。
床からモデルの後ろの壁に至る白の流れが特に美しく、またその壁のハイライトに映えるモデルの青い衣装と黄色い本、全ての色が清々しく、しかも柔らかで、色と形がピタリと収まり本当に素晴らしかった。
配置された人物や家具は、計算し尽くされて完璧な効果を生み出し、画面上に確固たる空間を作りだしていた。また一見静かな印象は受けるが、視線がリズミカルに動き、内容豊かなメッセージを拾っていくので、画面全体に静かなエネルギーが充満しているように感じた。
流石にフェルメール本人の手元に長くあったと言われるだけあって、正に渾身の一枚という傑作。実物を見ることが出来て本当に良かった。

他には、ヤン・ブリューゲルの「小さい花卉画−陶製壺の−」が印象に残った。
小林頼子著『花のギャラリー』で見知っていた作品だったので、見ることが出来てこれまた感激。全部で、58種あまりの花が描かれているそうだが、ぱっと見ただけでもアイリス、スイセン、矢車草、チューリップ、シクラメン、忘れな草、スノードロップ、ユリ、ヒヤシンスなどが認められた。
また、花卉画というとヴァニタス(世の中の空しさ、虚無)が真っ先に浮かんでくるがこの絵については、描かれた机の上のコイン、宝石、指輪等により、「稀少な園芸種はそれらと同等の価値を有する」というような意味が込められているとのことだ。(上記『花のギャラリー』による)
ヤン・ブリューゲルの作品では他に、動物を描いた習作画が卓越した描写力で目を引いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

すっかり忘れていたけれど、昨日でHPを作ってから1年経ちました。
いつも変わり映えしない内容にも関わらず、見てくださる方々に心から感謝いたします。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


04/5/25(火)

『若冲の目』黒川 創(講談社)読了。
若冲の文字に引かれて読んだけれど、私にはイマイチ↓でした。ある女性が若冲のことを調べて回るのだけれど、調べられた結果(若冲のことについて)は面白く、興味深く読んだけれど、その女性の恋愛関係というか、身辺話には全く興味がなく・・そういえば恋愛小説って読まないな〜。小説ではなくエッセイ風に纏めてくれた方が良かったかな。

『ギリシア神話を知っていますか』阿刀田 高(新潮文庫)読了。
何気なく本棚から掘り出した本だけど、これは良かった!
ギリシア神話の有名どころを分かりやすく紹介してくれる。何とも有り難い一冊だ。
いま話題の映画「トロイ」のトロイ王子パリスと絶世の美女スパルタ王妃ヘレンの一目惚れ略奪事件、迷宮に住むミノタウロス退治に向かうテセウス、守るはアリアドネの糸玉、さらには開けてはいけない壺を開けてしまったパンドラ、エディプス・コンプレックスで知られた実母と交わり実父を殺したオイディプス、その他アキレウス、ヘラクレス、アルゴー探検隊・・好色なゼウスや嫉妬深いヘラも実に人間臭くて面白い。
ギリシア神話は、西洋の絵画の主要な題材だ。内容を知っていると知らないとでは大違い。
著者は中学生の頃、自宅の美術全集の裸体画にうっとりしつつ、その結果描かれているギリシア神話に親しんでいったとあった。う〜ん、時代を感じる。今時そんな中学生いるのかな・・?


04/5/20(木)

『ロウフィールド館の惨劇』ルース・レンデル(角川文庫)小尾芙佐訳読了。
これまた高橋克彦の「ベスト50」からチョイス。
“ユーニス・パーチマンがカヴァデイル一家を殺したのは、読み書きができなかったためである。”読者はこの奇異な冒頭文に引き込まれ、いかにして善良なカヴァデイル家の人々が射殺されるに至ったかを知る。
ユーニスは自らが文盲であることを隠して生き、その為に人間らしい感情まで失い、異常な人格となっていた。そんな彼女をよりによって家政婦として雇ってしまったカヴァデイル家。
結局彼女は、文盲故に身を滅ぼすことになるわけで、ラストはやり場のない悲哀が漂っていた。

『とり残されて』宮部みゆき(文春文庫)読了。
一人の女性が「夢に出てくる場所を探して欲しい・・」と調査事務所に依頼を持ちかける『たった一人』、勤務先の小学校で「あそぼ・・」と囁く子どもに出会う『とり残されて』など7編すべてが怪異譚。
背筋がゾッとするような話から、ちょっとユーモラスな話まで、順番良く並べられた好短編集。
不可思議な現象は合理性だけでは埋まらない人の心を、時に救いもし、慰めもするのだ。ということを感じさせてくれた。


04/5/17(月)

今月に入って、親や実家で飼っている老犬の具合が立て続けに悪くなってしまい、色々とままならない状態です。でも、人や動物が歳をとることが悪いこととは思いません。「老い」は誰にもやってくることだし、親の姿は将来の自分でもある訳だし、学ぶことが多いですね。
また歳をとったから見えてきたこと、歳をとったなりの対処の仕方があるはずで、それを素直に教わろうと思います。・・とここではそう書いているけれど、時々「ったく、そんなこと分かってるよ。」なんて生意気な口をききますけどね。

『マニエリスム芸術論』若桑みどり(ちくま学芸文庫)読了。
マニエリスムはイタリア語のマニエラ「手法、様式」から派生した言葉で、およそ16世紀頃ルネサンスとバロックの間の様式概念。
当時マニエラを知ることが芸術家の必須であるとされ、つまりルネサンスの自然模倣、解剖学、偉大な規範となったミケランジェロの裸体図等、先人達の手法様式と図像の意味を熟知したうえで、奇想と寓意を加え、作品をいわば再構築するということで、それを会得したものが優れた芸術家であるとされていた。
後の17〜19世紀の絵画が自然らしさと整合性を求めるものとなったために、マニエリスムは、マニエラート「型にはまった、わざとらしく人工的な」ものと判断されるようになった。今日使われるマンネリズムもこの類だ。しかし、19世紀のロマン派、象徴主義から現代の主観主義のながれで、ルネサンスの衰退期とも見なされていたマニエリスムが再評価される。
本書はルネサンスともバロックとも一線を画す、闇と混沌の魅力に溢れたマニエリスムを多方面から論じていて、大変読み応えがあった。また広く16世紀という時代を知る上でも大変有意義だった。
特にルネサンスからマニエリスム、バロックに至る「受胎告知」の変遷は、構図、マリアの表情、天使の役割等、その時々の人々、教会の考え方が反映していて興味深く、印象に残った。

『誰かが見ている』メアリ・H・クラーク(新潮文庫)中野圭二訳読了。
これまた下記の「ベスト50」から選んだもの。
妻を殺害された経験を持つ辣腕編集者スティーブは、今また、息子と恋人を誘拐され再び絶望の淵にいた。二人はフォクシーと名乗る男にニューヨーク・グランド・セントラル駅の地下の一室に閉じこめられ時限爆弾もろとも吹き飛ばされる運命にあり、刻一刻とその時は迫っていた・・。
複線にスティーブの妻殺しの犯人の死刑執行があり、スティーブは死刑賛成論者、恋人のシャロンは反対論者というのも面白い。さらに著者は生粋のニューヨーク子だそうで、グランド・セントラル駅を中心とした場面は映画を見るような臨場感がある。徘徊する「ショッピングバッグ・レディ」の存在もリアルで小説を膨らませていた。ドラマチックで一気に読める面白さだった。


04/5/9(日)

このところ読んだ本が溜まってしまい、纏めてUPです。
『名探偵群像』シオドー・マシスン(創元推理文庫)吉田誠一訳読了。
先月読んだ高橋克彦の『玉子魔人の日常』で、「海外ミステリーベスト50」に入っていたもの。
アレキサンダー大王から、ナイチンゲール、レオナルド・ダ・ビンチ等々10名の歴史に名を残す偉人達。彼ら一人一人が生きた時代にその才能を遺憾なく発揮して難事件を推理解決する。
いかにもありそうな事、と思わせるところは流石。強烈さはないけれど、小気味よく品の良い作品で後味すっきり。

『ヒルダよ眠れ』アンドリュウ・ガーブ(ハヤカワ・ミステリ文庫)福島正実訳読了。
これも「海外ミステリーベスト50」に入っていたもの。なかなか魅力的な作品でした。
ある日公務員のランバートが帰宅すると、妻ヒルダがガスオーブンに頭を突っ込まれ死んでいた。状況からランバートが犯人として捕まってしまう。だが親友のマックスは、明るく前向きな善人である彼が犯人であるとは全く信じられない。では殺されたヒルダとはどのような女性だったのか?
彼女を知る人を当たっていくうちに彼女の特異な性格が明らかになってくる・・。
我が儘で、人の言うことを全く聞かない。恩着せがましく、じわりじわりと相手を不愉快にさせていく。最後には芝居がかった泣き落としでウンザリさせる。「ヒルダほど人を心の底から怒らせる人間はいない」そう思わせる類の女性なのだ。
ヒルダは冒頭殺された姿で登場するので、後は関わった人たちの回想の中で形作られるわけだが、存在感はある。
今時の感覚から言えば、それ程過激なエピソードがあるとも言えないし、もっとヒドイ女も今日日腐るほど居そうな気がするが、“誰もが衝動的に殺す可能性のある女”という設定がユニーク。ラストは好感が持てた。

『理由』宮部みゆき(朝日新聞社)読了。
ある嵐の夜、荒川区の超高層マンションで起こった「一家四人殺し」。しかしその家族は本来住んでいる小糸家とは全く別の家族だった。犯人は誰なのか、殺されたのは家族は何者なのか?
現代社会のそこかしこにある落とし穴、落ちる人、踏みとどまる人、救われる人。それらの人と家族との関わり、家族の絆とは何か。
『火車』も「自己破産」という現代の世相を反映したものだったが、『理由』では家族の象徴である「家」をめぐる夢や現実、特に裁判所の競売がクローズアップされていて興味深かった。


04/5/3(月)

1泊の小旅行だけれど、信州長野・憧れの小布施に行った。小布施に行きたくなったのは、高橋克彦を読んでから。そう言えば小布施堂の「栗鹿の子」は知ってたけど。
何故、北斎が江戸から遠く離れた小布施を訪れていたのか?パトロン高井鴻山への忠誠?実はその鴻山を監視するため?何を隠そう北斎は隠密だったのだ?!・・という『北斎殺人事件』の中に小布施の地が実に魅力的に描かれている。そんなこんなで是非一度ということになった訳で。

「北斎館」・・・肉筆が中心。「菊図」 「富士越龍」が良かったです。
「菊図」は、それぞれの品種の特徴がとても緻密にしかも整理されて表現されており、繊細さと力強さ、写実と意匠が絶妙で、魅入られるような作品でした。これを見ただけで全て良しと言う感じ。
「富士越龍」は、晩年の作品で署名は「九十老人卍筆」とあり、自らを龍になぞらえるかのごとく、その歳にしてさらに高みを目指し、高まる自分を確信する北斎は正に天才。天才とはそのような人を言うのではないかと思った。
北斎館HP

「岩松院」・・・何と言っても北斎の天井画「八方睨みの鳳凰図」が圧巻。たたみ21畳の大きさがある。絵の具の質がいいのだろう退色もなく、妙に生々しい。大胆さと気迫にたじたじ。
岩松院HP

小布施の町を歩いて先ず感じたのは、花が多いこと。街路樹のハナミズキ、ライラックは特にきれいで、ビオラやスイセン、ボタン、シャガ、カラスノエンドウ、タンポポやネギ坊主まで、庭先や畑や空き地、至る所が花だらけで本当に気持ちが良かった。また、信州ではお約束の「おやき」も美味しかったし、暑かったので「栗のソフトクリーム」も(*^ー゜)bなかなかでした。


4月 6月