徒 然 日 記

03/11/30(日)

雨の様子を気にしながら、六本木ヒルズの森美術館「ハピネス−アートに見る幸福への鍵 モネ、若冲、そしてジェフ・クーンズへ」へ行って来た。
古今東西の美術作品を「アルカディア」―地上の楽園、「ニルヴァーナ」―精神へ、「デザイア」―欲望の解放、「ハーモニー」 ―調和と均衡と大きく4つの世界観に分けて展示している。
率直な感想として、「ハピネス」で括った事自体が、抽象的で、広すぎないか?という気がした。
250点もの作品が正に百花繚乱、印象に残った作品はというと、若冲くらいかな。インドの石像や、リンガも面白かったけれど。近代絵画はもう少し大作が欲しかったし、現代絵画もポロックあたりが見たかった。現代美術の作品群は、質の高い物がチョイスされているのだろうけれど、私にはあまり「ハピネス」を感じられず・・。
しかし、世界各地の過去から現在までの創造物を見るのは楽しいこと。出来ればつらつらと見られる常設にして欲しい内容でした。

「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス(早川書房)読了。先日読んだ中編から発展させたキイスの代表長編。一気に読んで、つくづく考えさせられる小説だと思う。新たに長編に加えられた家族との再会によって、チャーリーの家族もまた、深く傷ついていたことが分かる。知能が退化した後に入る施設の訪問は、未来の悲劇を一層具体化させていた。


03/11/27(木)

何かの本で、“シュールレアリスムについての本は星の数ほどあるが、先ずブルトンの「宣言」を読むべきだ”ということが書いてあった。尤もな話しで、遅ればせながら「シュルレアリスム宣言/溶ける魚」アンドレ・ブルトン(学藝書林)読了。
簡単に言えば「宣言」は定義、思想に関するもの。「溶ける魚」はその思想をもとに自動記述の方法で書かれたもの。
一文を引くと“シュルレアリスム、男性名詞。それを通じて人が、口述、記述、その他あらゆる方法を用い、思考の真の働きを表現しようとする、心の純粋な自動現象(オートマティスム)。理性によるどんな制約も受けず、美学上ないし道徳上のどんな先入観からもはなれた、思考の書き取り。”
また睡眠時における夢、狂気、想像力、不可思議の復権と重要性を熱狂をもって語っている。

「溶ける魚」は、爆発的なイメージ(言葉)の洪水、氾濫、とでもいうような。自動記述であるから、意味やストーリーがある訳でない。いわば頭の中を生のままで見せられたような困惑を感じた。
注釈で、ブルトン自身がシュールレアリスムの画家として“古いところでは、ウッチェロ、近代では、スーラ、モロー、マチス、ドラン、ピカソ、ブラック、デュシャン、ピカビア、キリコ、クレー、マン・レイ、エルンスト、アンドレ・マッソン”とあげている。「溶ける魚」は、まさに実践、具体化なのだろうけれど、「宣言」の方が分かりやすく、面白かった。


03/11/25(火)

「幻影城」(角川ホラー文庫)読了。昭和50〜54年に発行された探偵小説誌「幻影城」をめぐる作家を集めたもの。当初は歴史に埋もれた作家の再評価だったようだが、次第に新作を掲載するようになったそうだ。印象に残ったのは、新青年趣味が面白い、仁木悦子「最も高級なゲーム」。
作者紹介に育児をしながらの作家活動とあった藤木靖子「微笑の憎悪」。これは子供を持った人なら、震え上がるような恐怖を感じるはず。他、「陥穽」竹本健治、「お精霊舟」宮田亜佐がよかった。
「シカゴ育ち」スチュアート・ダイベック(白水Uブックス)読了。シカゴを舞台に人生の様々な記憶を点景の様にちりばめてあります。訳者の柴田元幸氏が「これまでに訳した最高の一冊」というだけあって、言葉が洗練されており、柔らかな透明感がありました。派手さはないけれど、上質な本でした。あとがきに“敬愛する川端康成の「掌の小説」に触発され・・”というくだりがあり、私もその本は一番好きな短編集でもあるので、なんだか嬉しくなりました。


03/11/23(日)

昨日横浜の関内にある「横浜ユーラシア文化館」「横浜都市発展記念館」へ行って来た。内容に共通点は全くないが、同じ建物の2Fと4Fでなんだか可笑しい。それもそのはず、旧横浜市外電話局(歴史的建造物)の保存活用として、いわば寄り合い所帯なのだ。
ユーラシア館の展示で興味を引いたのは、「楔形文字粘土板文書」楔形文字が3p四方の粘土板に刻んである。まるでクッキーみたいで食べられそう。書かれてあることは、雄牛1頭、誰それに渡す、など生活に密着した覚え書きという感じ。
シリアのガラス製品、中国の焼き物、古代の各地のコイン、装身具、文書等々、ワンフロアーだからそう大がかりな展示ではないが、何より空いていてゆっくり見学できる。おまけに奥に読書スペースもあり、関連図書や美術全集なども自由に閲覧できる。料金も200円と非常にリーズナブル
まあ遠くからわざわざ来るほどではないけれど、山下公園、中華街、横浜に来た折りには是非どうぞ・・って別に回し者じゃないですよ。

「謎のギャラリー 愛の部屋」北村薫編(新潮文庫)読了。ミステリーのアンソロジーで、他に「謎の部屋」「こわい部屋」の全3巻。これを選んだのは、前に読んだ「くじ」のシャーリー・ジャクスンが入っていたから。ここでの収録作品は「これが人生だ」、少年が初めて一人で汽車に乗って、おじいさんの所まで行く。その間の出来事を書いたもの。「くじ」の凄みはないが、淡々とさりげなく描写してあって好感が持てる。子供って、こうやって自分のだけの世界を作っていくのだナァと思った。
他の収録の作品では、愛猫が死ぬ喪失感が辛い「猫の話」梅崎春生が印象に残った。


03/11/21(金)

ムベをUP。本当は春に花を描いてから実を加える予定だったが、花を描き損ねてしまったので、とりあえず実の方から描いた次第。花が思いの外ポロポロと落ちやすく、来年は水揚げ等に注意して、花を描き加えたいと思う。
画家の鏑木清方は文章の才もあり、とても美しい文章を書く。その中の一つに「庭木というのは人生で最も長いつき合いではないか」というようなことを書いたものがある。このムベも実家にある木で30年以上のつき合いになるわけだ・・。


03/11/17(月)

「鏡と皮膚」谷川渥(ちくま文芸文庫)読了。前半に鏡、後半に皮膚、真ん中に「間奏 可視性の謎―ベラスケス"侍女たち"をめぐって」を置いてシンメトリーな構成。前半ではオルフェウス、ナルキッソス、メデューサ、後半では皮剥ぎのミケランジェロが面白かった。
深層よりも表層−なんだか新鮮。ベラスケスのところで17cフランドルの「画廊画」の記述に興味を持ちました。


03/11/14(金)

何か考えたくないことがある時や、忘れたいことがある時は、行きつけの図書館へ行く。一人でぶらっと出かける。一人で背表紙を眺めたり、面白い文章にぐっと入り込んだり、お腹が空いたらテキトーに菓子パンとコーヒーで済ませ、それで何時間か過ごす。それだけ。でも満足。

「心の鏡」ダニエル・キイス(早川書房)読了。ダニエル・キイス文庫に入っている日本版オリジナルの短編集。
特殊な能力を持つ子供を見つけて、未来へ送る仕事をしている弁護士の話、表題の「心の鏡」がよかった。また代表長編「アルジャーノンに花束を」の原型となっている中編版も入っている。「アルジャーノン・・」は気になっていた小説だったので、大いに興味を持った。精神遅滞者が手術を受け、急速に知能を増大させ天才となる。そして瞬く間に元に戻ってしまう。それぞれの段階で主人公チャーリイの感情、思考、外界との関係が変化していく。人間の精神の美しさと醜さが際だって、痛々しい・・。長編版を是非読んでみようと思う。
序文に著者が、自らの作品がどのように生まれてくるかを語っているのが面白かった。


03/11/10(月)

ラズベリー(キイチゴ)をUP。今回から作品に、学名、科などを書いたプレートを入れてみました。
本当は最初からその位しなければいけなかったのにと、反省。実は今まで、大した植物図鑑を持っていなかったこともあり、最近購入。いかに自分が無知であったかを痛感した次第。
ラズベリーは小品だけれど、気持ちよく描けた気がする。実を描くのってやっぱり楽しい。

「西洋美術事件簿」瀬木慎一(二玄社)読了。レオナルドからポロックあたりまでの芸術家にまつわる「事件」を羅列。しかし皮相的で、イマイチの内容。題名からして、「金田一少年の事件簿」みたいだし・・。でも私の好きなポントルモ、カラヴァッジョも登場したんでまあまあです。


03/11/6(木)

「24人のビリー・ミリガン 下」ダニエル・キイス(早川書房)読了。1人の人間の中に、24の人格。というより24人が一つの肉体を共有といった感じか。多重人格者が犯罪を犯して、鑑定され、数々の施設で様々な治療を受けていく。その過程を追ったものだが、なんだかやりきれないような感じがした。特にこの人物がどういう状態であれ、犯罪を犯して被害者が存在したことは事実だ。
しかし多重人格者の多くが幼児虐待が引き金となっているのも事実。彼らもまた被害者なわけだ。負の連鎖・・か。
ちょっと重い内容に疲れたので、次は楽しめるものを読もうかな。


03/11/2(日)

やってきました11月、また一つ歳をとってしまう。もう歳とるのも飽きたなぁ〜。私は常々世の中で唯一裏切らないものは「時間」だ・・と思っている。時間は人に優しい時もあるし、過酷に現実を感じさせるものでもある。そして決して逆さには流れないコワイもの。味方に付けるしかないな。

「24人のビリー・ミリガン 上」ダニエル・キイス(早川書房)読了。何となく気になっていた本(ノンフィクション)だったので、読んでみて、あ〜こういう話だったのかと。
連続暴行犯として逮捕されたビリーは、犯行の記憶が全くない。それは彼が24の人格を持つ多重人格者だったからだ。義父の暴力によって子供だった彼が異常をきたした下りは、読んでいて辛いものがある。人には色々な形の苦痛回避があるのだな・・と思った。
今、ラズベリーを描いている。まだ小さい苗だけれどちゃんと実が付いていて嬉しい。この冬を上手く越せたら来年はもっともっと実を取って、ヨーグルトにでも入れてみたい!・・とらぬ狸です(^_^A


10月12月